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心のホッとコラム ~K-TASのカウンセラーから~

箱根駅伝を歩く

箱根駅伝を歩く

「箱根駅伝を歩く」(泉麻人著. 平凡社.2012.11.)という本がある。泉氏と私はほぼ同時期に歩き出したようである。泉氏は箱根駅伝コースに連なる街・寺の過去・現在を織り交ぜ真面目に描きつつ歩く。

一方、私はなぜ、箱根駅伝だったのか。①箱根駅伝のファンであり、学生が目にしている同じ景色を見たい ②一区間約20キロという距離とゴールがある ③近隣の散歩では「寒いから、風が強いから」と中断の口実を見つけてしまう ④歩き疲れて止めたくなった時、学生たちに負けてしまった気分になるから、それがモチベーションである。

 

一昨年末の箱根駅伝行

鹿児島の高校生たちは、島津義弘公を讃える行事「妙円寺参り」(鹿児島市内から約20㎞の行軍)に参加するのが恒例である。この日、道路は高校生があふれる。箱根駅伝と妙円寺参りはほぼ同距離。この経験があるのでたどり着けるはずと始めたが、10㎞も歩けば「まだか、まだか・・・」と中継点を意識し始める。権太坂、遊行寺の坂、押切の坂なんて可愛いもの、と思えるのが箱根の山。

6年前の12月29日、5区に向かった。登り坂は函嶺洞門を越えると傾斜が急になる。重い脚を叱咤しながら黙々と前に出す。「大平台のヘアピンだ!」と見上げると、赤文字の「中央大学」の応援旗が広がった。「もう準備ができているんだ」。

喘ぎつつ旗を見上げた私はこう思った。中央大学の選手は、応援旗を見て「赤文字が象徴する場(大学という空間・仲間)に抱かれ癒されて」、「だから私はまだ走って行ける。」と新たなエネルギーを得るのだろうと。辛さや孤立を感じた時、そこに旗がある。それは、あたかも自分を見守る母のほほ笑みよう、肩をたたきあう仲間のように感じるのだろう。

 

いだかれ、はぐくみ、きっかけをつくる

ヘアピンカーブをなぞりながらさらに考えは続く。カウンセリングって、この応援旗と同じ意味合いを持っているのだろう、と。カウンセリング場面にいる人たちは、それぞれの人生を悩みつつ生きている。私たちが来室者と一緒に取り組んでいるカウンセリング場面は、来室者にとってホッとできる「いだかれた温もりの場」であり、歩き出していく意欲と自信を「はぐくむ場」であり、そしてふたたび伸びやかに葉を広げる「きっかけをもたらす場」である。

私はそのような場を提供できているのか、提供しているつもりになっていないか、応援旗でありえているか。そのことを心に留めておきたい。私の箱根駅伝は、少しだけカウンセリングを考える機会でもあった。

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